
1970年代を中心に発表されたロック作品(アナログLP版)は、1980年代後半に一部を除いて順調にCD化されていきました。しかしながら、その音質に満足できないタイトルが少なからず存在していたことも事実です。それに対してアーティスト自身が満足できないこともあり、いわゆるプログレッシブ・ロックにおいてはクリムゾンKing CrimsonのロバートフリップRobert Flippが自らクリムゾン旧譜のリマスタリングを行いました。以降、EL&P、YES、Pink Floyd、GenesisそしてTangerine Dream、PFM等、続続とリマスタリングされています。それに留まらず、紙ジャケ限定仕様再リマスタリングなどが雨後のタケノコのようにリリースされ、まるで「少しづつ音質向上しながら何度も同じタイトルを買わせ、一粒で2度も3度もオイシイ、ロバートフリップ商法(またはブート業界的商法)」と陰口を叩かれるような状態です。リマスタリングの恩恵は何といっても音質向上、そして紙ジャケ仕様を中心とした優れたアートワークと言ったところでしょうか。ただし、リマスタリングが手放しでHAPPYな事かというと必ずしもそうではなく、失望させられる商品も少なからず存在するので、注意が必要だ。
マイクに関しては「Tubular Bells」を除いて、リマスタリングの流れに乗ることはありませんでしたが、2000年、Virgin時代の作品16タイトルが、ついに(やっと)リマスタリングされました。しかも「HDCD」規格であり、それに対応したCDプレーヤで再生すれば、かなりの高音質が期待できるとのこと。しかしながら、限られた収入で色々買うべき物は多い(PC周辺機器とかDVDプレーヤとか、、、)このご時世、4万以上もするようなCDプレーヤを買うなど論外、まぁ現在使ってるプレーヤが壊れたら検討しても良いかな、ってところである。今回のHDCDは、従来版CDに対してリマスタリングを行ったもので、ボーナストラック追加などは皆無である。Hergest Ridgeは「Boxed」バージョンのまま。Sallyも偽物。
発売当時の価格(もちろん輸入盤のみ)の相場は税別1400〜1600円台の良心価格です。あまり高いようなら、ボッてる可能性がありますね。なぜか、どこの店でも「Tubular Bells」のみ+400〜500円くらい高値をつけている。「ジャケット要らないから、安くしてよ」と言いたくなるのは、私だけではないはずだ。
リマスタリング担当は初代Tubular Bellsの制作に参画したSimon Heyworth。従来の音源をそのままHDCD化したものではなく、リマスタリングが施されているので、通常のCDプレーヤでも明らかに音質向上しています。従来盤では埋もれていた、繊細な音の表情も聞き取ることが出来ます。音だけに関しては、大いに「買い」と言えるでしょう。HDCDプレーヤは所有していないので、評価は出来ません。
HDCDのアートワーク・デザインは「Rina Cheung@Public Art Creative Consultants Limited」が担当し、8ページのブックレット仕様で、David Laingによる解説文が追加されている。8ページという数字からは、それなりの分量を連想するが実態はさにあらず。
・表紙/裏表紙:2ページ
・追加アートや写真:2ページ
・解説文とクレジット(曲目、演奏者、プロデューサなど):2ページ
そして、残り2ページはHDCDのディスコグラフィー(広告)に過ぎない。解説も概要程度に過ぎず、クレジットには誤りも目立つ。しかも8ページの制約により、従来版(輸入盤)に添付されていた歌詞カードが削除された。それどころか、AMAROKの御伽噺や疑似トラックリストも削除されるなど、あまりに凶悪。とりあえず、Ommadawnのサンプルをお見せしよう。
いかに、しょうもないものであることが、ご理解いただけたと思う。 ついでに、AMAROKの追加アート。何でしょ、これ?
これだけでも大問題だが、ジャケットは。。。それでは行きます(笑)
Virginからリリースされた初期版CDは、見開きや裏表紙の消失、醜く巨大なタイトル文字フォント、理不尽なトリミング、不鮮明な印刷、発色不良、乱雑な修正など、ボロボロであった。ゆえに今回のリマスタリングはオリジナルアートワークの再現が期待されたが、期待に反して初期版CDに手を加えてトリミングや発色を悪化させるなど、惨澹たるものである(タイトル毎には別途記載予定)。追加アートなど、オリジナルをないがしろにした点で本末転倒、なんら価値を見出せない。
Five Miles Out以降は更に深刻で、画質の劣化が顕著であるうえに、オリジナルアートに対する容赦無い編集削除が施されてしまった。
更に追記するべきは、背表紙の「又ベル・シンボルパズル」である(下図)。これは、HDCDシリーズ全16枚を揃えることで又ベルシンボルが完成する、コレクター心を擽るような企画である(かえって購買意欲減退との声もある)。とはいえ、これは大きな問題をはらんでいる。「Islands」以降、もともとCDで発売された作品は、オリジナルの一部を「又ベル・シンボルパズル」に置き換えられてしまう。しかもこのパズル、IslandsのピースにQE2のものが印刷されてしまっている。つまり、決して完成しない。ジャケットに関しては紙くず同然と言っても過言ではないです。あまりにヘナヘナの紙質も気になるところ。
それだけではない。ディスク盤面のデザイン。センスのかけらも無い。個人的にはピクチャーレーベル、例えばロジャー・ディーン デザインのVirginトカゲ・ロゴ、「Incantations」は岩場、「QE2」は浮き輪(私は見たことない)、「Crises」は月、などを期待していたが、贅沢だろうか??
Rina CheungはHDCDシリーズとしての統一感だけを考えてデザインしたに過ぎない。たぶんVirgin側から従来版CDの商品を手渡され、「これでデザインしてね」なんて依頼された、ってところだろう。と言うよりも、オリジナル路線で行くならば、外注なんて必要ないはずである。「オリジナル復刻は後々にとっておいて、今回は単なる”つなぎ”の企画。少しでも音質を向上すれば、それでも熱心なファンは財布を開くのさ」なんて、足元見られているような心境になる。
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